「相続」という言葉はとても多岐にわたって使われていると思います。
法律用語としての「相続」とは、「故人の財産などの様々な権利・義務を他の人が包括的に承継すること。その承継のための法律に則った手続き」と定義づけられています。
しかし、相続の現場では「法律の手続きではない問題」を抱えている人がとても多くいます。
・親の介護をしていた長男と都会で暮らす次男の関係が、親の死によって上手くいかなくなった。
・親の残した財産は実家とわずかな現金。3人の兄弟姉妹がその財産の分け方についての話し合いがうまく進んでいない。
・息子や娘ははみんな都会で暮らしていて、田舎に年老いた親だけが暮らしている。
・今住んでいる自宅の名義が20年以上前に亡くなったおじいちゃんのままになっている。
・父が亡くなって戸籍の収集をして初めて、父が再婚だったことと前妻との間にも子供がいたことがわかった。
などなど、法律の手続きの前に整えなければならない問題がたくさんあります。
「法律の手続きではない問題」に向き合わずに相続手続きを進めてしまうと、
家族が争う「争族トラブル」が起きてしまうことがあります。
トラブルの根本をたどると、どこかでボタンの掛け違いが起きていたり、
うまく真意が伝わらなかったり、コミュニケーションの問題だったりします。
このようなケースが急増している今、争族トラブルはもはや社会問題と言えます。
相続診断士は特定の国家資格を持っていません。
法に則った手続きを必要とする業務には、我々相続診断士は一切ノータッチで、然るべき専門家への橋渡しをしています。
一般社団法人相続診断協会では、相続診断士、笑顔相続を以下のように定義づけています。
<相続診断士とは>
「法律の手続きではない問題を早期に発見し、士業との協業を通して争う相続を減らし、笑顔相続の普及活動により社会問題を解決する存在」
<笑顔相続とは>
「相続を通じて祖先や家族、仲間と感謝の想いを共有し、笑顔の相(すがた)を続けることであり、笑顔家族を続けること」
相続において法律に則った手続きが必要なのはもちろんですが、その前にやっておいて欲しいことがたくさんあります。
誰かが亡くなって「相続手続きしなきゃ」となるのがこれまで普通のことだったかもしれませんが、それでは遅いこともあるんだということを、それを知っている我々はしっかり伝えていく必要があるんです。
私にとって、相続とは「手続き」ではありません。相続とは何世代にもわたって家族の笑顔が続く「状態」であり、大切なのはその状態を作るための「プロセス」そのものです。
だからこそ、みんなが元気で仲がいいうちから、相続への準備をスタートして欲しいと思っています。
エンディングノートや家族の写真や映像などを机の上に置いて、家族それぞれがお互いの思っていることや日々の感謝を伝え合う。
家族の思い出を、それぞれの立場から思い出しあいっこする。
「あのとき自分を叱った父は心の奥でこう感じてたのか」
何十年という「熟成期間」を経て、自分が当時の父の年齢になったからこそわかる「真実」が、きっとそこにはあることでしょう。
もしかしたら長い間胸に引っかかっていた小さなつかえが取れることもあるかもしれません。そのような時間を家族で共有することそのものが、とても尊いものだと考えています。
そんな時間が共有出来る家族って、素晴らしいじゃないですか。
そのためのサポートが必要な方に、私はこれからも相続診断士として関わっていきます。私はいつもこう思っているんです。
「相続診断士の役割は法律の向こう側にある」
多くの人が、自分の相続は子供世代の問題ではなく自分自身の問題だと考えるのが当たり前の世の中にしていきたいです。
まさに「相続は人生最後の大仕事」です。
私はこれからも相続診断士として、笑顔相続の考え方を広め、争族ではなく笑顔相続がスタンダードになっていくという未来のビジョンに向かって、正々堂々と歩みを続けていく所存です。
そのために、これからも学び続け、伝え続けます。